現代自動車製造ロシア(HMMR)が現地生産の取り組みを加速する。ゼネラルモーターズ(GM)サンクトペテルブルク工場跡地の94.83%を買収する手続きを進めている。ロシア自動車市場における現代ブランドのシェアがさらに拡大する可能性がある。
連邦反独占局(FAS)は7月24日、HMMRからGM工場跡地の買収に関する申請書を受理したと発表した(注1)。主要経済紙「コメルサント」(7月28日)は、HMMRがカリーニングラード州の自動車受託地場大手アフトトルに生産委託しているモデルの一部を買収先工場に移管し、特別投資契約(SPIC)(注2)で約束した内容の履行を念頭にさらなる現地製造を進める狙いがあると報じている。HMMRは2020年6月にはエンジン工場の建設をサンクトペテルブルク市内で開始しており、ロシアでの生産体制強化を急いでいる。
ロシア自動車市場の上位の一角を占めるHMMRによる一連の生産体制の強化は、市場構造を変える可能性がある。ロシアでの自動車ブランド別年間販売台数(2019年)において、現代自動車ブランドは17万8,809台でロシア3位(2020年1月22日記事参照)。年間メーカー別生産台数(2019年)では24万5,000台とロシア2位に位置する(2020年3月31日記事参照)。地場大手投資銀行VTBキャピタルのアナリストであるウラジミル・ベスパロフ氏は今回の買収について、ロシア自動車市場の長期的な成長可能性を踏まえ「現代自動車がロシアでの車種のラインアップや市場シェアを拡大するために新工場が必要であった」と指摘している(「ベドモスチ」紙7月27日)。
GMは2008年にサンクトペテルブルクでの製造を開始したが2015年に操業を停止(2015年3月23日記事参照)。地元では同社工場跡地の活用が注目されていた。2019年にはベラルーシの完成車メーカーが工場の買収に向け動いていたが、不首尾に終わっていた。
(注1)2006年7月26日付連邦法第135-FZ号「競争保護について」では、事業者が市場競争環境に大きな影響をもたらし得る取引を実施する際にはFASに申請書を提出し事前許可を得なくてはならないと規定している。
(注2)2015年7月に創設され、連邦政府、連邦構成体(州・地方・特別市)政府、地方自治体(市町村)政府が契約の相手方となる。投資企業が7億5,000万ルーブル(約13億5,000万円、1ルーブル=約1.8円)以上の投資や雇用創出、新技術の導入、現地調達率の拡大などを約束することで、企業利潤税(法人税)、資産税、土地税などの優遇措置、土地貸与やインフラ整備支援、連邦政府からの各種補助金などが提供される。契約(権利義務)内容は個別の交渉による。内容は非公開。詳細は調査レポート「ロシアにおける自動車産業をはじめとする製造業向け支援制度」を参照。
(一瀬友太)
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July 31, 2020 at 08:18AM
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