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EVを知り尽くしたクルマ テスラ「モデル3」(Vol.585) - 読売新聞

 米国の電気自動車(EV)メーカーのテスラから「モデル3」が昨年、日本でも発売された。「モデル3」は、スポーツカーの「ロードスター」、上級4ドア車「モデルS」、SUV(スポーツ用多目的車)「モデルX」に続く車種で、同社では量販車の位置付けで、価格は511万円からとなっている。

 今回試乗したのは、最上級グレード「パフォーマンス」(四輪駆動車)で、価格は717万3000円だ。車体寸法、価格帯ともに、メルセデス・ベンツ「Cクラス」や、BMW「3シリーズ」と近く、EVとエンジン車という違いはあるが、車格としては競合といえるのではないだろうか。

 EVらしさを強調した作りが特徴のテスラは、ドアを開けて乗り込むところから、他社のクルマと異なる。「モデル3」では、専用のカードキーを前後ドア間の支柱部分にかざすと、ドアロックが解除され、車体面と一体となっていたドアの取っ手を押して、開けるようになっている。運転席と助手席との間のセンターコンソールの指定位置にカードキーをかざすと電源が入る。あとは、ブレーキペダルを踏み、ハンドル右脇のシフトレバーをドライブ(D)に入れると、運転が可能になる。

 運転席の目の前にメーターやスイッチは一切なく、ほぼすべてを15インチのタッチスクリーンで済ませる。座席の前後調整は従来通り座席のところで行うが、ハンドル位置やドアミラーの調整も、タッチスクリーンと、ハンドルの左右スポークに設置された丸いスイッチを上下左右に動かして行う。

 タッチスクリーンの画面左部分には、ナビゲーションの地図が大きく表示され、視認性に優れる。画面右端の上側にデジタルの速度表示があり、その下に自車の周囲を走る他車の位置関係を影絵のように映し出す。普段、ミラーなどから得た情報で頭の中に思い描く周囲の様子が、視覚的に表現される。もちろん、基本は目視やミラーで通常通り確認する必要があるが、瞬時の判断などの際には有効な情報源となり、安心感がある。また影絵のような淡い表現なので、運転中の目障りにもならない。

 ほかにも、空調や荷室トランクの開錠などもこの画面上で操作するのだが、それらすべてを説明しはじめるときりがない。さっそく走ることにする。

 モーター駆動のEVは、発進が力強く、その後の加速も滑らかなところは、同社の他のクルマと共通だ。アクセルペダルの操作は、日産自動車の「e‐ペダル」のように、ワンペダルで加減速と停止を行える。減速時の回生の強弱も画面上で調整できる。加速の威力を実感したのは、都市高速への流入だった。そのインターチェンジは、加速車線が短く、エンジン車ではクルマの流れの間合いを見ながら全力加速しなければならない。「モデル3」でも、そのつもりで全力加速させたが、あまりに速度が上がりすぎ、アクセルペダルを戻すほどであった。それほど瞬発力が強い。

 乗り心地は、ドイツ車のようにやや硬めではあったが、最上級グレードのこのクルマに装着されたタイヤの扁平(へんぺい)率が35%とかなり低い値(扁平率が低いと、スポーツ走行には有利だが、路面の影響を大きく受けやすく、乗り心地は劣るようになる)であったことからすると、路面からの衝撃はうまく吸収しており、不快ではなかった。

 タッチスクリーンに表示されたデジタルの速度も、視界の隅で的確にとらえることができ、他社のセンターメーターや、あるいは既存の速度計などと比べても、視認性は高いと感じた。目線の移動が少なくて済むのと、デジタルの数字表記が明確だ。

 後席も快適で、ガラスサンルーフが後方まで大部分を貫き、空を見上げられる開放感は、じつに爽快だ。他社のガラスサンルーフとは比べものにならない。

 ドアの開け閉めや、メーターやスイッチ類のないダッシュボードの造形など、奇抜という印象を最初は受けるが、いずれも実用的な装備や操作方法であることを試乗から実感した。自動車メーカーとしての歴史は短くても、EVを知り尽くし、電動とデジタル技術のよさを最大に()かす。その場合の最適とは何かをゼロから考え抜いたクルマであることを思い知らされた。

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January 14, 2020 at 03:20AM
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