ピナクルズ代表取締役CEOの貴山敬氏
新型コロナウイルスによる感染拡大で、従来の勤務スタイルを変えざるを得なくなった職種は多い。なかでも、最も頭を抱えているのが、製造や物流、小売、飲食業などで働くいわゆる“現場”の人々だ。
重要なノウハウが、働く人々や機械の動きに凝縮されている現場では、デジタルへの移行(DX)は難しい。現場では常に人手不足に悩まされているだけではなく、近年では外国人労働者の増加により「日本語が通じない問題」にも直面しているという。
そんな環境下で立ち上がったのが、スタートアップのピナクルズが提供する現場向けクラウド型動画教育プラットフォーム「tebiki(テビキ)」だ。
tebikiは、現場のOJT(現場教育)をスマホで撮影し、ブラウザ上で簡単にシーン削除や追加、図形挿入などが行える。また、音声入力で字幕を自動生成でき、さらに自動翻訳も可能。動画閲覧データの解析機能も備えており、誰がどこまで習熟したのかを可視化。現場教育の進捗状況をリアルタイムで確認できるようになっている。
そんなtebikiが正式リリースされたのは、2019年3月(ベータ版は2018年3月リリース)。運営元であるピナクルズは、グロービス・キャピタル・パートナーズからの資金調達を実施した。同社はこれまでに有安伸宏氏、辻庸介氏、赤坂優氏らエンジェル投資家たちの出資を含め、合計3億円のシードラウンドでの資金調達を実施したことになる。
売上40億円の食品工場長時代に感じた、現場教育の課題
tebikiを運営するピナクルズ代表取締役CEOの貴山敬氏は、旅行系スタートアップを立ち上げ・売却後、コーチ・ユナイテッドの取締役へ就任。クラウドワークスへの事業売却、クックパッドによる吸収合併後に退任。2018年3月に同社を創業した。
IT、テック業界のキャリアが長い貴山氏だが、旅行系サービスを起業する前には商社に所属しており、出向先の食品工場で工場長を務めていた経験がある。
「当時は、大手ピザチェーン店へ卸すための業務用ピザを作っていました。売上が40億円ほどある規模の食品工場だったのですが、一番苦労していたのが現場教育です。というのも、現場教育は属人性が高く、かつ現場の機械や人の動きを見ないとわからないことも多いため、現場での研修や実習が必須となります。しかし、多くの工場が教育に割けるリソースがない。そんな状況を何とかできないかという想いは、ずっとありました」(貴山氏)
例えば、工場における機械メンテナンス。当然ながら、機械が1つでも故障すれば、納期が遅れるだけでなく、社員たちも手持ち無沙汰になってしまう。だが、メンテナンスの教育コストは高く、最も学ぶべき内容はいち早い修理が求められる「故障時」に限られていたりする。そうすると、新人社員の出番はほぼなく、結果的にベテラン社員に頼りきりになってしまうことも課題だった。
そんな経験をヒントに生まれたtebikiは、現場のOJTをスマホで撮るだけでほぼ完了できる撮影・動画編集機能を実装。さらに、音声入力で字幕を生成でき、それを自動翻訳する機能も用意した。これはすべて、「現場で簡単に使える」を意識して開発されたものだ。
「現場の方にはパソコン入力が苦手な人もいるので、アテレコのように音声入力できるようにしました。電波がなくても使えるようにしたり、とにかく『何も考えずに使える』動画技術を用意したのです。
それに加えて、動画を見た社員が『これはできる・できない』を判断するボタンを実装。社員それぞれのスキルを可視化し、必要な動画をアジャストできるようにもしています」(貴山氏)
現在、tebikiはアスクルをはじめ、不二家やニッセイ、わかたけ、イセ食品といった大手が導入。簡単に動画を撮影でき、字幕も自動翻訳できる点が高く評価されていると貴山氏は語る。
tebikiが「仕組み作り」のために目指す3つのステップ
気になるのは、競合の存在だ。近年、スマホやタブレットの普及とともに、Wi-Fi環境も整備されてきたことで、tebiki以外にもスタディストの「Teachme Biz」やClipLineの「ClipLine」をはじめとした競合サービスがしのぎを削っている。
そんな競合を、tebikiはどう見ているのか。貴山氏に聞くと、返ってきたのは「一番の競合は、マイクロソフトのExcelとWord」という答えだ。
「確かに、僕ら以外にも現場をDXさせようとするサービスはあり、マーケットも伸びています。ですが、そもそも目指しているゴールが違うようです。僕らがやりたいのは、『手順書を作る』ことではなく『仕組み作り』。そういう意味では、10年以上も現場で使われ続けているExcelやWordが、僕らのライバルと言えるかもしれません」(貴山氏)
貴山氏いわく、仕組み作りに必要なのは「現場ノウハウのクラウド化」「OJTのDX化」「人事評価のDX化」の3つ。
「まず、今取り組んでいるのが、『現場ノウハウのクラウド化』。ある程度の現場ノウハウ動画が蓄積されたら、今度は誰にどう教えるかを自動で提案する『OJTのDX化』へ進める。最終的には、現場で働く方々のスキルを可視化し、管理者が適切に人材配置できる『人事評価のDX』ができればと考えています」(貴山氏)
社員への教育はできていても「誰がどんなスキルを持っているのか」「どれくらい業務をこなせるか」を管理している現場は少ない。そのため、適切な人材配置ができていないことも悩みの1つになっていた。これも、貴山氏の工場長時代の経験がもとになっている。
「当然ながら、現場教育やOJTは、人や機械によって状況が変わります。『単なる手順書作りサービス』で終わらないためにも、現場の方々が機能を使いこなし、アップデートし続けられるサービスであることが大事。tebikiで『使いやすさ』にこだわる理由は、ここにもあります」(貴山氏)
ピナクルズが考える現場教育の3つのDX
1〜2年でサービスを磨き、2021年12月には単月売上10倍へ
ピナクルズはグロービス・キャピタル・パートナーズからの資金調達を受け、開発や営業、採用を加速させていくつもりだ。
「新型コロナウイルス発生以前に比べて『オンラインで集合研修できないか?』など、サービスに関するお問い合わせは倍になっている」と説明する貴山氏。ユーザー数は非公開だが、2021年12月末までに、単月売上10倍を目指すと宣言する。
tebikiは契約期間や初期費用を設けず、月10万円から利用できる。ユーザー1社に付き1人のスタッフが営業からカスタマーサクセスまでを担当し、ユーザーの行動観察はもちろん、深い課題や知見をすくい上げ、機能へ落とし込んでいく。
「解約は最も強いフィードバックです。だからこそ、もっと細かくフィードバックをもらえるようにしておきたい。そこで、1社につき1人の担当をつけて細かくコミュニケーションする。さらに、あえて初期費用をいただかないスタイルにして、自らプレッシャーをかけています(笑)」(貴山氏)
仕組みを変えるのは難しい、けれど――。今はまだ「簡単に使える現場教育の動画サービス」のフェーズだが、貴山氏の目線はその先を見つめ続ける。
「tebikiを数十人、数百人単位の現場の方々に使ってもらうには、地味だけれど大事な機能がたくさんあります。ここ1〜2年の間は、商品フローやセキュリティ、工場機械のログイン方法といった機能を揃えることに注力します。数年後には、人事データに僕らのサービスが介入している状態をつくっていたいですね。
tebikiの対象ユーザーとなる現場で働く方々(デスクレスワーカー)は、労働者人口の約8割を占めています。にも関わらず、IT投資が占める割合はわずか1%。その状況を変えるためにも、tebikiをより進化させていきます」(貴山氏)
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September 15, 2020 at 02:00AM
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