中国政府は、ドイツのインダストリー4.0や日本のSociety 5.0と同じく、製造現場の高度化に大規模投資した。そうして世界中がコロナ禍におびえる中、まずまずの成長路線へ回帰を果たした。しかし、アリババ集団など中国IT企業はさらに先を行き、企業を超えたデータ連携によるさらなる効率化を目指す。
中国経済は2020年第3四半期(7~9月)に前年比4.9%増と力強い回復を示した。新型コロナウイルス感染症の震源地となった中国だが、徹底的な対策により流行の抑え込みに成功。主要国では最も早くプラス成長に回帰している。
もっとも中国においても消費の回復は遅れている。成長を支えるのは景気対策として強力に推進されている政府、企業の投資だ。中国政府は「新インフラ」と銘打ち、5G通信ネットワーク、電気自動車用の充電ステーション、データセンターなど、いわゆるニューエコノミーの成長に必須のインフラに重点を置いて投資する方針を示している。その新インフラの一つに取り上げられているのが工業互聯網(工業インターネット)だ。
工業インターネットとは、ドイツが提唱したインダストリー4.0の中国版だ。工場の設備や生産ライン、部品サプライヤーや販売店での各工程などを、IoT(モノのインターネット)によりデータ化し、リアルタイムに共有。効率の改善、仕掛品や不要在庫の削減、あるいは柔軟な生産ライン組み替えにより低コストでの多品種少量生産を実現する……といった内容だ。
日本ではSociety 5.0に相当する。内閣府公式サイトでの解説を引用しよう。
「これまで取引のない他分野や系列のサプライヤーを連携させ、ニーズに対応したフレキシブルな生産計画・在庫管理すること」「AIやロボット活用、工場間連携による生産の効率化、省人化、熟練技術の継承(匠の技のモデル化)、多品種少量生産」「異業種協調配送やトラックの隊列走行などによる物流の効率化を図ること」「顧客や消費者においてもニーズに合った安価な品物を納期遅れなく入手できる」(出所/内閣府「Society 5.0 新たな価値の事例(ものづくり)」)
何とも夢のある話に思えるが……。ドイツでインダストリー4.0が提唱されたのは11年と既に一昔前となる。Society 5.0は16年と4年前だ。この夢のある話はどこまで実現しているのだろうか?
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