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クラウド化をためらわない協和キリン、高崎工場のDXは1年半で大きな成果 - @IT MONOist

アマゾン ウェブ サービス(AWS)のオンラインユーザーイベント「AWS Summit Online」に、協和キリンが登壇。「ライフサイエンス業界の規制に対応したクラウド活用最前線」をテーマに、全社ITシステムのクラウド化推進や、主力の高崎工場におけるデジタル化プロジェクトの成果について報告した。

 アマゾン ウェブ サービス(AWS)が、2020年9月8〜30日に開催したオンラインのユーザーイベント「AWS Summit Online」に、バイオ医薬品などを手掛ける協和キリンが登壇。「ライフサイエンス業界の規制に対応したクラウド活用最前線」をテーマに、同社 ICT ソリューション部 企画管理グループ マネジャーの楠本貴幸氏と生産本部 高崎工場情報システム室 兼 生産企画部 企画グループ マネジャーの武内雅春氏が講演を行った。本稿は、両氏の講演内容に、別途行った取材の情報を追加して構成した。

「目的はクラウド化ではなく、ビジネスを推進すること」

 医薬品業界では、研究開発から製造、サプライチェーン、流通と販売、市販後の調査などを含めて「GxP(Good x Practice)」と呼ばれる品質ガイドライン・規制への準拠が求められる。GxPの“x”には各プロセスに対応するアルファベットが入り、例えば、研究&探索であれば「GLP(Good Laboratory Practice)」、臨床開発であれば「GCP(Good Clinical Practice)」、製造であれば「GMP(Good Manufacturing Practice)」となっている。

医薬品業界におけるGxP 医薬品業界におけるGxP(クリックで拡大) 出典:AWS

 これらGxPの管理を行う上でITシステムは重要な役割を果たしているが、全ての企業にDX(デジタルトランスフォーメーション)が求められる中で、GxP関連システムにおいてもより効率的な運用が可能になるクラウド化をどのように進めるかが課題となっている。

 今回の講演に登壇した協和キリンは、これらGxPを含めた社内ITシステムのクラウド化に積極的に取り組んでいることで知られている。2012年に、Google Appsを導入することでメール環境をオンプレミスからクラウドに移行したことを皮切りに、2013年からはIaaSの基盤としてAWSの本格導入に踏み切り「クラウドファースト宣言」の下で、さらに多くのシステムへのクラウド導入を推進してきた。

協和キリンにおけるITシステムクラウド化の取り組み 協和キリンにおけるITシステムクラウド化の取り組み(クリックで拡大) 出典:協和キリン
協和キリンの楠本貴幸氏 協和キリンの楠本貴幸氏

 楠本氏は「目的はクラウド化ではなく、あくまでビジネスを推進することだ。これが大前提。その上で、変化に対する漠然とした不安がある故に変わらないことがリスクになることも訴えておきたい。当社は、社内研究開発型の製造業として新しいものを取り入れるための社内承認プロセスがあり、2010年ごろから新たな技術であるクラウドの活用を検討していたところにAWSからさまざまなサービス提案があり、そこからクラウド導入を本格化させた」と説明する。

 協和キリンにおけるITシステムのクラウド化の基本方針は明確だ。まずは、SaaSを第一選択肢として、SaaSを選択できない場合にはAWSベースのIaaSによってシステムを展開する。既に存在するサービスを組み合わせて有効に利用するとともに、各サービスのメリットを生かしながら最適なアーキテクチャを採用するようにしている。「会社全体として業務が止まらないことが重要だ。マルチクラウドも意識はしているが、AWSを使用しているIaaSの領域よりも、アプリケーションを含めて業務を止めないという意味でのマルチクラウド化を重視している」(楠本氏)という。

 2013年のクラウドファースト宣言から7年にわたってAWSを活用することにより、当時は全てオンプレミスだったデータセンターの多くがクラウドに移行している。基幹系システムは100%、医療業界に求められるCSV(Computerized System Validation)対象システムについても5%が残っているだけで、これらも近くクラウドへの移行が完了する。なお、工場や研究所にはまだオンプレミスのデータセンターが残っているが、これらも徐々に移行を進めていくとしている。

 協和キリンは2018年から、「イノベーションへの挑戦」を掲げ、AI(人工知能)、コグニティブなどの最新テクノロジーを用いたデジタル化を推進している。同社におけるITシステムのクラウド化は基幹系システムの領域が中心だったが、これを第1ステップとすると、第2ステップは「イノベーションへの挑戦」に向けた既存ビジネスのデジタル化推進が焦点となる。この第2ステップの取り組みを代表するのが、バイオ医薬品の中核工場である高崎工場におけるデジタル化プロジェクト(高崎デジタル化PJ)だ。

基幹系と中心としたITシステムのクラウド化から既存ビジネスのデジタル化推進へ(クリックで拡大) 出典:協和キリン

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October 23, 2020 at 08:00AM
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