元記事:CATL-Built Tesla Model 3 Battery Pack Will Use Prismatic Cellsd by Chanan Bos on 『CleanTechnica』
LFPバッテリーでモジュールを組まない技術を採用
バッテリー関連のニュースには最近、毎日のように驚かされます。ちょうど1週間前、テスラがカリフォルニア州フリーモントにバッテリーセルの生産ラインを作っているかもしれないというニュースがありました。数日前に今度はテスラがコロラド州デンバーのバッテリー系スタートアップ企業を買収することになり、イーロン・マスクも直々に視察に赴いたと報じられたばかりです。
昨日のニュースでは中国にあるテスラの工場ではモデル3のスタンダードレンジプラス(SR+)にCATL製のリン酸鉄リチウム(LFP)バッテリーを使用し、しかもモジュールを組むこと無くバッテリーセルをそのままパックに入れる(セル トゥ パック)らしいと言われていました。そして今日分かったのは、このLFPバッテリーがプリズム型で、バッテリーパックの製造(もしくは設計だけ?)はCATLのセル トゥ パック技術を使うということです。
セル トゥ パックはテスラも研究している技術ですが、現在の所、まだ実用化に至っていません。このニュースを最初に報じたのはベンチマーク・ミネラル・インテリジェンス社のサイモン・ムーア氏のツイッターアカウントでした。
Tesla will use prismatic battery cells for the first time in Model 3 short range for Chinese consumers. #EV
This will be made using CATL LFP cells tailor made for Model 3.
It’s the first time Tesla have expanded from cylindrical cells (18650 / 2170) @benchmarkmin
— Simon Moores (@sdmoores) February 19, 2020
【Tweet内容の訳文】
テスラは中国向けモデル3スタンダードレンジで初めてプリズムバッテリーセルを採用。 #EV
これにはCATL製のモデル3専用LFPセルを使用する。
テスラが円筒形セル(18650/2170)以外を使うのは初めて。 @benchmarkmin
省スペースと低価格を実現
繰り返しますが、テスラが中国で生産するモデル3のバッテリーパックは円筒形ではなく角型バッテリーを使用し、モジュールも組みません。このニュースを聞いた時に確信したことがひとつだけあります。それは、このバッテリーパックの実現にはLFPセルを使うしかないということです。
ほとんどのEVが数年経てばバッテリーが劣化していくのですが、テスラはほとんど劣化が起きません。円筒形のセルを何千本と使用することで、放電する際の1本あたりの負荷が少ないからです。また、円筒形バッテリーは容積が小さく、表面積も多いので冷却がとてもしやすいです。
こうした状況の中、テスラはバッテリーの品質を維持し、価格を下げ、角型LFPセルを使用できるのです。セルごとの負担は増えますが、LFPバッテリーは寿命が長いため問題ありません。LFPバッテリーの一番大きな弱点はエネルギー密度の低さです。しかし、これもセル トゥ パック技術を用いることで、より多くのセルを詰め込んでモデル3 SR+に必要な50kWhのバッテリーパックを作ることができます。
見た目の違い
私が最初に調べたのはモデル3のバッテリーパックと、その内部構造です。そこから、どのようなセルをいくつ、どのように配置すればよいか計算しました。モデル3のバッテリーパックの大まかな外寸は216.63 cm、147.32 cm、10.5 cm (L x W x H)です。その中に4つのモジュールがあり、中央の長いモジュールで185.4 cm、29.2 cm、9 cm (L x W x H)になります。
モジュールを廃止するとはいえ、おそらく間違いないのは、角型セルの高さは90 mm以下で、現在出回っている角型セルもそのぐらいの大きさです。角型セルを使用しているEVの殆どが、約48 mm厚のため、テスラもそうだとすれば、だいたい38個のセルを詰めることができます。それが5~6列になるのではないかと思われます。
まとめ
このニュースを理解するには少し時間がかかります。裏側に隠された意図に気づくためにはたくさんの計算と気分転換のシャワーが何度も必要になるでしょう。このニュースから現時点で汲み取れる重要な内容は、テスラとCATLの協力関係は思っていたよりも真剣なものと思われるということです。
CATLはモデル3のバッテリーパックの寸法を大幅に変更する必要のない、特別な新型バッテリーパックを設計するための下準備を相当してきたことが伺えます。。
これはテスラが中国の当局者を喜ばせるために本来の得意分野からそれているだけなのか、それともCATLのセル トゥ パック テクノロジーを競合に晒すリスクを犯してでも新型バッテリーパックを設計するメリットがテスラとCATLにあるのか?
角型セルを使用する場合に懸念点が2つあります。ひとつはどれだけしっかり冷却ができるのか、そしてもう一つはこのバッテリーパックからどのような加速が得られるのか、です。よく耳にする質問は「テスラが買収したマクスウェル社の乾式電極技術を利用してエネルギー密度を大幅に向上させられたら、このテクノロジーに未来はあるのか」ということですが、こればかりは誰にもまだ分かりません。
このニュースに関して、読者の皆様でシャワー中に何か閃いた方がいれば、是非コメント欄で共有してください。
※情報開示:先日発表した記事、「Electric Car Drivers: Demands, Desires & Dreams」のスポンサーには CATLも含まれています。
訳者あとがき
テスラがこれまで使ってきたパナソニック製のNCA(ニッケル コバルト アルミニウム)は、とても性能が高いのですが、材料に用いられるコバルトが非常に高価で、社会的な問題も抱えています。一方、LFPはありふれた材料でできているため、大量生産に向いています。
中国では2019年の新車販売のうちEVが4.7%を占めました。台数にして120万台強ですが、今後EVが普及すると今のコバルトの供給量では足りなくなることが必至です。EV最大手のテスラだからこそ、先を見据えたバッテリー戦略なのだろうと思います。
(翻訳・文/池田 篤史)
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February 24, 2020 at 02:38AM
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