Search

空駆ける石巻の町工場(1) 金属研磨の技術で世界へ - 河北新報

宮城のニュース

空駆ける石巻の町工場(1) 金属研磨の技術で世界へ

タービンブレードと同等サイズの金属の研磨作業を見せる佐藤さん=石巻市のエヌエス機器 田園地帯にあるエヌエス機器の工場

 「この部品が空へ行く。大きなプレッシャーを負いながらも、みんな夢を持って取り組んでいる」
 技術向上を統括する製造技術課の高橋盛二課長(40)が、従業員の意気込みを代弁する。

 金属研磨を手掛ける石巻市のエヌエス機器は、三陸自動車道河北インターチェンジから北西へ10キロほど、旧北上川沿いの田園地帯に小さな工場を連ねる。
 最も新しい第5工場。ここで磨き上げられるのが「タービンブレード」だ。世界中を飛び回る大型航空機のエンジンに欠かせない部品。作業員10人ほどがペン型やベルト状の電動工具を手に、真剣な目で作業に当たる。
 タービンブレードはニッケル合金製で、エンジンの「羽根」として1台に1000枚以上使われる。最前面の「ファンブレード」が取り込み、「コンプレッサーブレード」が圧縮した空気を、最終的に燃焼部へ送り込む役割を担う。
 研磨によって高温と高速回転への耐久性を高め、燃焼効率を上げることはエンジン自体の品質に直結する。不具合は重大事故にもつながる。目指すのは、表面の凹凸が1000分の1ミリ以下という高い精度だ。
 高橋課長は「ピカピカにすればいいわけではない。『限りなくゼロ』に追い込む。でも削りすぎて『マイナス』になれば、形状が崩れてしまう」と難しさを説明する。複雑な形状に応じ、大小の工具を駆使する技術と経験が問われる。
 ブレード加工課の佐藤絵美さん(37)は2015年10月、パートとして入社した。めきめきと研磨の技術を身に付け、18年9月に正社員に。今では手順書の作成や後輩の指導もこなす、精鋭の一人だ。
 「扱う部品の変化が激しい。同僚とのコミュニケーションや信頼関係を大事にしてきた」と佐藤さん。「どんな部品でも『ここでしかできない』ような部署になれるよう、さらにスキルアップしたい」。モチベーションは高い。

 エヌエス機器は1986年に創業し、当初は自動車部品の加工がメインだった。相馬市に工場を持つIHIキャスティングス(東京)の取引先となり、2015年に航空機部品事業を担うブレード加工課を設置した。
 19年4月、専用の第5工場を新設し、今年初めには航空機部品が売上高の4割以上を占めるまでになった。米ボーイング社の新型機のタービンブレードを担当することも内定。宇宙ロケットや戦闘機にも幅を広げつつある。
 「時代に合わせて変化し、なんとか生き残ることができた」。創業者の阿部秀敏社長(61)が述懐する。控えめな言葉の裏には、時代の風に翻弄(ほんろう)され、あらがいながら、風を読み、つかんできた歴史があった。

 役員・従業員45人の小さな会社ながら、航空機部品の研磨を主力事業に成長させた石巻市のエヌエス機器。バブル崩壊、東日本大震災、新型コロナウイルス禍と難局が続く中、技術を文字通り磨いてきた町工場の航跡をたどる。
(報道部・高橋一樹)

2020年09月14日月曜日


Let's block ads! (Why?)



"工場" - Google ニュース
September 14, 2020 at 09:48AM
https://ift.tt/33tkCY2

空駆ける石巻の町工場(1) 金属研磨の技術で世界へ - 河北新報
"工場" - Google ニュース
https://ift.tt/2QqOfnV
Shoes Man Tutorial
Pos News Update
Meme Update
Korean Entertainment News
Japan News Update

Bagikan Berita Ini

0 Response to "空駆ける石巻の町工場(1) 金属研磨の技術で世界へ - 河北新報"

Post a Comment

Powered by Blogger.