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プロ初完封の中日高橋宏斗思い出したくない記憶慶大不合格の証を大切にし続ける潔さ見守り続けたい中日スポーツ東京中日スポーツ - 中日新聞

慶大不合格を知らせる通知(本人提供)

慶大不合格を知らせる通知(本人提供)

◇13日 中日7-0ロッテ(バンテリンドームナゴヤ)◇番記者とっておき話

 中日・高橋宏斗投手には大切にしている1枚の画像がある。「たまに見るんです。思い出したくない記憶でもあり、振り返っておくべき出来事だとも思うんです」。慶大AO入試不合格を知らせる画面のスクリーンショットだ。

 合否はスマホで確認できた。中京大中京高で発表を待った。周囲から「そろそろだね」と声をかけられる。「受かるもんだと思っていました」。

 対策は完璧なはずだったが、不合格の文字が目に飛び込む。「何が起こったか分かりませんでした」。混乱は思いもよらぬ行動に駆り立てられスクリーンショットした。

 この1枚を年齢が20も離れている記者がなぜ持っているのか。昨年8月。「大事にしている写真を持っておいてくれませんか? 僕が携帯を紛失したら、もうこの世からなくなってしまいます。なくなるのは嫌です」と伝えられた。たまたま近くにいたため連絡先を交換し写真を受け取った。

 送られたら紙面で紹介したくなる。何度か使用許可を取ると右腕は「いつでも大丈夫です」と言ってくれた。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の決勝で中継ぎ登板したタイミングもあったが、初完封の方がふさわしい気がした。

 「誰が僕がWBCの世界一メンバーになると思いました? 人生、何があるか、何がベストか分からないものです」

 この記事で慶大不合格の通知は世に出ることになる。高橋宏は「それ」を受け入れる潔さがある。「それ」とは見られる側、プロ野球界で生きていくということ。見る側のファンは選手の言葉にときに共感し、共鳴する。右腕の成功と失敗はファンとともにある。「うちの宏斗」を見守りたい。いいときも悪いときも。

(川本光憲)

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